: O. Yuanying

小川一水「フリーランチの時代」

実のところ、私は日本人の書く現代小説っていうのはあまり好きじゃない。

  • まわりくどい言い回し
  • グダグダとした主人公の長々とした内面吐露
  • オチも無ければヤマも無い

不幸な事にこんな小説ばかりに出会っていた。 そりゃあまあ、嫌になるよね。

ああ、もうウンザリ。

っと、いうわけで、長らく日本人の SF も食わず嫌いで読まず、 星新一くらいしか読んでなかったわけだ。

しかし、それじゃいかんと。

何がいけないのかよくわからないけれど、 言語化できない欲求により岩本町の書泉で手に取ったのが、 フリーランチの時代 だった。

正直、あまり期待してなかったのだけれども、 面白かった。

シンプルでわかりやすい文章のせいなのかどうなのか、 読んでる途中でどういうわけか、この作者がどうしても西洋系の外国人の作家に思えてしまって、 あ、「小川一水」だから日本人なんだよな、と思い出すこと数度。

とりあえず褒めてるつもりなんだけれども、 舞台が日本以外の場所のときは特に、日本人の香りというものがしなかった。

普通は日本人作家の書いた小説を読んでいると、 舞台が日本であろうとなかろうと、 日本人臭さというものが臭ってくるものなんだけれども、 どういう訳かそれが無い。

これがSFという仮想世界と非常に調和してて、 描かれるSFの世界に没頭することができた。

以下ネタバレ。

フリーランチの時代

表題作。

日本人臭くない、とか言っておきながら、 主人公が日本人のせいか、主人公たちのしゃべり方のせいか、 非常に日本人ポイSF。

まあそれはそれでいい。

けど、なんなんだろうね、人間たちの幼年期が終わって、

「さあこれから面白くなるぞ!この作者はどんな世界を創造していくんだろう!?」

って盛り上がってきたときに終わる。非常にもったいない。

まあけど、そのまま続けていたら、短編どころか文庫本2冊くらいになりそうな感じ。

Live me Me

オチは妥当なところ?

交通事故で脳幹が損傷して、 動くことも感じることもできない、 ただ、脳だけ生きてる女の人の話。

途中で意識だけの存在になった彼女が、 ネットゲームの中でだけ、 他人とコミュニケーションをとることができる、 っていうシーンがあったけれども、 そのまま現実世界にはいない、ネットだけで生きる存在になるのかと思いきや、 ロボットの体になって、現実世界に復帰。

やっぱりネットの世界で自由に生きるよりも、 不自由ながらも現実世界で生きる方が大事ですかね?

Slowlife in Starship

太陽系開拓時代に孤独な宇宙船を駆るニートの日常??

主人公の生活にすごく憧れるのは、やはり私がニートに憧れているっていうことなのだろうか。

とりあえず現実世界のニートと違い、 自分の食い扶持はちゃんと稼いでいるし、 仕事が無かったとしても生きていくことは可能だという設定から、 少なくとも将来の不安とかは無い訳で。

将来の不安を感じないニートはニートじゃないよね。たぶん。

ハウスキーパーロボットのミヨと主人公のやりとりが最高。 ってか、このロボット、絶対中に人が入ってるよ!とか途中で思ったけどそんなことなかった。

千歳の坂も

いつの間にか不老不死を獲得していた人類の話。

途中からの時間の飛躍っぷりがすごい。まさにSF。

ああ、こんな感じで永遠に生きてみたいなあ。

アルワラの潮の音

時砂の王」 に秘められた熾烈な戦いを描くスピンオフ、らしい。本の後ろに書いてあった。

まだ読んでなかったから気づかなかったけど、なんか中途半端な感じがしたのはそのせいか。

短い枚数でエンターテイメントしてて面白くてよい。 というのはとても的確な意見だと思た。