: O. Yuanying

構造バイオインフォマティクス (2-3)

蛋白質のドメイン解剖学(配列情報解析から構造決定まで) - 廣明 秀一

そういえば卒論を書くときにT先生から、「タンパク質」と書くときには必ずカタカナで「タンパク質」と書け、と指導をうけた記憶があるけれどあれはどういう意味だったのだろうか?今となっては知る由もないし、T先生は今年は4年生に「必ず」漢字で「蛋白質」と書け、と指導しているかもしれないのでどうでもよいのですが。。。

この講演のタイトルは漢字の「蛋白質」でした。もしかしたらT先生の指導は蛋白質、と書くときは「蛋白質」か「タンパク質」か、「たんぱく質」なのか、表記のゆらぎを一つに統一しなさい、って意味だったのかも知れぬ。

蛋白質のドメイン解剖学とは、「マルチドメインな蛋白質において、各ドメインの機能を分離して、ある特定のドメインについての原理を解明すること」だそうです。この講演者のいう分離とは、文字通り分離で、あるマルチドメインな蛋白質を切断してしまい、ある特定のドメインの立体構造を決定したりしている。

何故ドメイン部分のみを切断して立体構造を調べているのかというと、この講演者の出自がNMRの研究だったかららしい。NMRの場合、立体構造を決定できる蛋白質の大きさというものが比較的小さなものだけで、できれば100残基以上の大きさの立体構造は調べたくない。→ということで切断して小さくしてしまえ。ということらしい。

ドメインハンティング。ドメインの決め方。

既知のドメイン
pfam, SMART
ホモログを拾う
FORTE, FUGUE

ドメイン解剖学の弱点

  1. ドメインの境界はどこ?
  2. そのドメインの試料が取れない場合。
  3. 新規ドメインを切り出しても立体構造解析ができるとは限らない。
  4. 新規ドメインを切り出してもそれが蛋白質の中での同じ働きをしているとは限らない。

この講演の中で講演者独自の工夫として発表したかったと思われる内容は二点。

  1. ドメインの切断技術。
  2. 切り出したドメインの立体構造解析方法。

ドメインの切断技術 - 修論の学生が蛋白質からドメインを切り出してそれを精製し、立体構造解析を行おうとすると、下手すると2年くらいじゃ終わらない。もっと精製が簡単にならないだろうか?ということで色々工夫。具体的には切り出しの工程を簡便化したらしいがメモしてないので忘れた。

切り出したドメインの立体構造解析方法 - せっかく切り出してきたドメインもNMRにかけてみるとポリペプチドがアグリゲーション(弱い非特異的自己会合)を起こしておりその部分の構造を見ることができない場合がある。→Coilsというソフトウェアを使うことでアグリゲーションを起こす部分を予測することができる。(実際立体構造を見ることができない部分と、Coilsによってアグリゲーションが起こっていると予測されている部分が一致している。)そこで、ドメインのアミノ酸を置換して、Coilsにかけてやることにより、アグリゲーションをおこさないようなアミノ酸置換を探索してやる。その後NMRにかけて立体構造を予測する。

蛋白質ドメイン解剖学の手順。

  1. PSI-BLAST
  2. ClustalX / FORTE
  3. ドメインの切り出し
  4. ドメインの立体構造決定

実際にClustalW/Xを使う研究というものをはじめて見たかも。

この人はまた、新規ドメインを予測して切り出してきて、立体構造を決めて、実験を行いそのドメインの新しい機能をみつけた、という論文を書いたが、実験を行った部分は怪しいということで論文で削除されたらしい。

立体構造から見たDNA結合タンパク質のDNA配列認識機構 - 河野 秀俊

この人は「タンパク質」らしい。

最新のヒトゲノム解析によると、タンパク質をコードしている遺伝子数は当初推定されていた30000よりもさらに少ない20000から25000と見積もられた。
→ハエなど下等生物との遺伝子数の差は小さい。
→転写制御因子の制御機構の違いが生物間の違いを担っている可能性が高い。

転写制御因子がどのような機構で特別なDNA配列を認識しているのか、立体構造の面からその認識機構について論じていた。

Direct Recognition
アミノ酸と塩基との直接の相互作用。例えばアデニンに対してはどのような塩基がアミノ酸が近くに来やすいか?などをエネルギーを調べて、そのエネルギーが小さくなるようなアミノ酸を探す。
Zinc fingerに対しての傾向。三つのfingerがそれぞれどの塩基にくっつきやすいかについて、エネルギーの計算を行った。
塩基-アミノ酸のDirectな相互関係に特異的なAffinityがある。
Indirect Recognition
タンパク質と直接結合していない塩基配列に対してもAffinityがある。
→DNA配列がとるConformationによりそのAffinityは異なる。
DNAの塩基対を剛体近似してMD計算を行った。

Direct RecognitionとIndirect Recognition、タンパク質の種類によって、その特異的な結合のためのエネルギー配分は異なる。